老兵の独り言

八尾市をはじめとする全国での左翼情報チェックと真正保守の陣営拡大を願っています。 国連をはじめとする人権条約を基礎とする国内法の点検と法破棄運動も行っています。

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伊勢先生の 「国際派日本人養成講座」をご紹介します。


 言論の自由も人権も認めない中国のナショ
ナリズムの激情にどう向き合うのか?

■1.長野に林立した中国国旗■

 聖火リレーを護るべく、長野の沿道を埋め尽くした巨大な真
紅の中国国旗の林立ぶりに、多くの日本人は違和感や不安感を
抱いたことだろう。日の丸とチベット旗を持って沿道にいた中
川章さん(57)はこう証言している。[1]

 市役所近くの交差点で中国人の集団にいきなり、巨大な
中国国旗で通せんぼされましてね。若い中国人の男に旗ざ
おで左手の甲をたたかれ、小旗をもぎ取られ、後頭部に旗
ざおでズコンですよ。旗ざおといっても長さ2メートル以
上、直径3センチ以上もあるアルミ製。・・・

 70歳すぎの知人も若い女に腹をけられ、プラカードは
ビリビリに破られました。警察官が3人ほど駆けつけてく
れましたが、彼らも旗ざおで殴られていました。・・・

 結局、私は後頭部に大きなコブが残り、おまけに頸椎
(けいつい)ねんざで全治3週間。医師の診断書をとり、
警察に被害届を出しました。20人近くの仲間も頭や背中
にけがをしました。女性も老人もお構いなしです。一体こ
こはどこの国なんですか!

 自らと異なる主張をする人々に対して暴力を振るうことに何
のためらいも感じない精神構造は、およそ思想・言論の自由と
人権を重んずる近代社会にはそぐわないものである。

■2.「漢奸(売国奴)」■

 もちろん、冷静に事態を考える中国人もいる。米国デューク
大学で、チベット問題をめぐる学内対立の回避を呼びかけた中
国人女子学生、王千源さん(20)はその一人だが、「民族敗
類」(民族の面汚し)といった罵倒(ばとう)のメールや掲示
板への書き込みが殺到し、その上、個人情報がネット上で暴露
され、中国・青島の実家も、赤ペンキで「殺売国賊」(売国奴
を殺せ)と落書きされたという。[2]

「売国奴」をかつて中国では「漢奸(かんかん)」と言った。
中国での民主化運動に関わり、今は日本国内で言論活動を展開
している石平氏[a,b]は、「漢奸」「売国奴」の持つ語感につ
いて、こう解説している。[3,p73]

 漢奸とか売国奴とかはいちばんきつい罵倒語で、全人格
を否定する言葉になります。あいつは泥棒だといわれても、
泥棒には泥棒なりの人間性がある、あいつは悪いやつだと
か人殺しだとかいっても人間性まで否定しているわけでは
ない。でも漢奸となると、もう人格も人間性もまったくな
いわけです。これはお前は人間じゃないといっているのと
同じです。漢奸はキリスト教でいえば悪魔にあたるでしょ
うね。いったん漢奸だと烙印を押されると、もはや名誉回
復の可能性もなくなります。

 石平氏自身は明らかには語っていないが、「今の中華人民共
和国という国家自体に正当性がない[3,p43]」とまで公言して
いる人物だけに、現代の「漢奸」「売国奴」として、王千源さ
ん以上の罵倒が浴びせられているものと思われる。

■3.「自分が虫けらであるかのような気持ちにさせられる」■

 もう一人、祖国から「売国奴」と罵倒されている人物がいる。
韓国から来日して日韓比較文化論などを著している呉善花(お
・そんふぁ)氏である[c]。呉氏は自らの体験をこう語る。[3,p75]

 韓国では、女性に対する最悪の非難言葉として売春婦と
いう言葉が使われますが、売国奴という言葉もそれと同じ
屈辱感を感じさせる言葉になります。国を売るというと抽
象的に聞こえるかもしれませんが、韓国人には身体を売る
のと同じ感覚で響くんです。

 ・・・これは人格の否定、もうお前を人間として認めな
いということですから、何をいってもいいわけです。どん
な口汚くののしっても、相手が売国奴である限り許されま
す。私に対する非難でも、それはもう聞くに耐えない汚い
言葉がズラッと並ぶんですね。・・・

 私の場合は、私を売国奴と非難する韓国の記事などを読
んでいると、自分が何か毛虫のようになっていく気持ちに
なるんです。意識のうえでは何のやましさも感じてないの
に、自分が虫けらであるかのような気持ちにさせられると
ころが、やはり韓国人なんでしょうか。自分でも嫌になっ
てしまいます。

 日本をいろいろと知っていって、私を含めた韓国人がい
かに日本をなめていたのか、何も知らずに威張ってばかり
いたのかを思い知らされ、そこから自分なりに感じた日本
評価と韓国批判を書いていったわけですが、書けば書くほ
ど韓国で叩かれるのですね。こんな国って、ちょっとほか
にないんじゃないでしょうか。

 こんな思いまでしながらも筆を曲げない呉善花氏の節操には、
敬意を表するばかりである。

■5.「韓国には歴史観というのはひとつしかない」■

「売国奴」と罵倒されるのは、まずその国家が唯一のイデオロ
ギーや歴史観を定め、それを盲信する国民がそれへの一切の批
判を許さない所から生ずる。呉善花氏は、自らの体験に照らし
て、こう語っている。[3,p127]

 ・・・歴史にはいろいろな観点があるということを、私
は日本に来てからはじめて理解しました。だから、日本で
は韓国や中国の歴史観に賛成する意見も、堂々と述べられ
るわけです。韓国ではそれは許されないことですね。

 韓国には歴史観というのはひとつしかない。ひとつのイ
デオロギー、国家のイデオロギー、国家宗教となっていま
す。そうした歴史教育によって、ひとつの歴史観が国民の
アイデンティティを形成してしまいます。

 韓国の「ひとつしかない」歴史観は、「日韓合同歴史教科書
研究会」での韓国側の主張によく現れているとして、呉善花氏
はそれを次のように要約している。[3,p201]

1. 日本には神功皇后の三韓征伐説、任那日本府説など、
古代以来の根深い征韓論がある。
2. それは、豊臣秀吉の侵略前後に、学者たちによって朝
鮮劣等論、蔑視論へと集約され、幕末の韓国征伐論と
なった。
3. 明治初期の征韓論はそれを受けて朝鮮侵略を引き起こ
した。
4. 征韓論は現在の日韓関係にまで延長している。

 日本側の学者は韓国側から、「合同研究の大前提」として、
まずこれを認めろ、と要求されたという。これを「一つの仮説」
として、歴史的事実に照らして検証しよう、というなら、まだ
学問的態度と言えるが、これを「前提」として認めよ、という
のでは、自らのイデオロギーに従えと言っているに過ぎない。

 こんな要求を突きつけられた日本の歴史学者たちは、唖然と
したことであろう。

■6.「間違いはすべてよそがやっていること」■

「ひとつしかない歴史観」というのは、中国も同じである。
「歴史を鑑(かがみ)として」とは、江沢民や胡錦濤など中国
側が繰り返し使っている言葉だが、これに関して、石平氏はこ
う論評している。 [3,p117]

 歴史を鑑にするということは、歴史を見て今の自分たち
が間違っていることはないかと、歴史に照らして正しいこ
とをしているのかと、あらためて自分たちの今をみつめる
ことでもありますよね。でも今の中華人民共和国は、最初
から自分たちが間違っているとは思っていません。間違い
はすべてよそがやっていることで、自分は間違ってないと
思っているんですから、歴史を鑑にする必要はまったくな
いんです。

 中国が日本の「侵略」で苦しみを受けた歴史を「鑑」にする
というなら、現在の中国自身がチベットを武力侵略して同じ苦
しみを与えているわけで、まずはそれを反省する必要がある。
そんな事をおくびにも出さずに、日本政府に「歴史を鑑に」と
いうのは、中国側の「ひとつしかない歴史観」を受け入れよ、
という事に他ならない。それは学問的な歴史観というより、一
つの政治的イデオロギーに過ぎない。

■7.中国・韓国はイデオロギー国家■

 政府が「ひとつしかない歴史観」を定め、民衆はそれに従わ
ない人間を「売国奴」として罵倒する。そういうイデオロギー
的・全体主義的な風潮がなぜ中韓に強いのか、呉善花氏はこう
説明している。[3,p232]

 日本は江戸時代に地方分権のシステムが根付いていまし
たが、韓国や中国は最後まで中央集権国家の歴史でした。
そういう歴史性の違いもあって、日本は韓国や中国の全体
主義的な動きには、最初からアレルギー反応が強いように
思います。

 根本的な違いは、中国・韓国は明らかなイデオロギー国
家ですが、日本は国家や民族をまとめる中核思想や中核的
な宗教、つまりイデオロギーを持っていない非イデオロギ
ー国家だということです。国家、民族、人間の行動を貫く
基本的な考え方はこれだという、一個の大きな観念形態が
規定する原理原則をもつのがイデオロギー国家ですが、日
本はまったくそうではない。そして、そうではないという
ことが、中国や韓国にはまったく理解できないんです。

 それでも日本は現実の外交関係では、ちょっとやりすぎ
と思えるほど、相手の立場や事情を考慮しながらつきあお
うとします。しきりに理解を示そうとするんですが、相手
のほうにはそういう理解を示そうという発想がない。すで
にそこのところで、価値観や倫理観の違いによる行き違い
が出てくるんですね。

 今回の胡錦濤訪問でも、まさに福田首相の姿勢は「ちょっと
やりすぎと思えるほど、相手の立場や事情を考慮」したものだっ
た。しかし「相手のほうにはそういう理解を示そうという発想
がない」。こういう行き違いの中では、ガス田問題、毒ギョウ
ザ問題、チベット問題などに関して、本質的な議論がなされる
はずもなく、当然、何ら具体的な成果も上がるはずもなかった。

■8.ナショナリズムという反抗期■

 日本の地方分権的に対して、中韓の中央集権的という歴史的
個性の違いもあるが、もう一つは国民国家としての発展段階の
違いもある。

 意見の異なる相手を「売国奴」と罵倒する傾向は、かつての
我が国にもあった。たとえば、日露戦争の講和に賛成した『国
民新聞』の徳富蘇峰は、「売国奴」として罵られ、暴徒が社屋
に押しかけて焼き討ちを図った。[d]

 一つの国民国家が生まれ、成長していく過程では、程度の差
はあれ、こういう熱烈なナショナリズムが燃え上がる時期があ
る。それはちょうど少年が大人になる過程で、反抗期を迎える
のと同じである。

 周囲の大人たちに反抗していく過程で、自我が確立し、やが
て社会の中で自立した人間となっていく。国家もナショナリズ
ムという反抗期を経験し、それを乗り越えた段階で国際社会の
中で自立した国民国家になっていく。

 こうして成熟した国家の国民が抱く自国の個性や特長に対す
る自然な「祖国愛」とは、反抗期のイデオロギー的な「ナショ
ナリズム」とは、本質的に異なるものである。

 こうした反抗期のナショナリズムを、我が国は19世紀後半
から20世紀前半にかけて体験し、卒業したわけだが、韓国は
今、ようやく卒業しつつある段階のようだ。かつては慰安婦問
題や竹島問題が燃え上がるたびに、群衆が日本大使館を取り巻
き、日本国旗を焼くという騒動を起こしていたが、ここ数年は
そういうナショナリズム的激情はだいぶ沈静化しつつある。

 逆に中国はまさに政府が煽っている面もあって激烈なナショ
ナリズムの時代に突入しつつある。北朝鮮に至っては、中世的
専制独裁体制のもとで、国民国家の入り口にも到達していない。

 こうして東アジアの国々が異なる歴史的段階を生きている現
象を古田博司・筑波大学教授は「東アジア異時代国家群」と呼
んでいる。[e]

■9.相手に聞く耳を持たせるには■

 こういう反抗期のナショナリズムに燃える国とどう付き合っ
ていったら、いいのだろうか。呉善花氏は、自らの体験をこう
語っている。[3,p239]

 私の場合は、アルバイト先の仕事の関係で、韓国のこと
をよく知ったビジネスマン、ジャーナリスト、弁護士など
のグループがあって、そこに参加して歴史認識の議論なん
かをしたんです。彼らは私が反日韓国人であることなど一
切かまわず、自分たちの考えを隠すことなくストレートに
表現するのです。それで私の方も激しくストレートな主張
をする。ですからほとんど喧嘩になるんですが、その会の
後では必ずみんなで飲み会をして楽しく騒ぐんです。

 呉善花さんはこの人たちの考えには強く反発しながらも、彼
らが韓国の歴史や文化をよく知っており、さらに堂々と自分の
意見を述べる姿勢・態度に、ともかく聞く耳をもったという。

 韓国人なら誰でもそうだと思います。日本人は何かとい
えば衝突を避けようとして、いいたいことをあまりいわな
い。それで場をとりつくろうとして謝ったり、相手の下に
出ようと謙虚な姿勢をとろうとしたりする。これが韓国人
に不信感をもたせることになってしまうんです。・・・

 韓国人は、この人は自分の国のことをよく知っていてく
れるなあと感じ、しかも相手が堂々と自分の意見を主張し
ていると感じられると、まず聞く耳をもちますね。もちろ
んこれは出発点ですが、ここが第一のポイントだと私は思っ
ています。これは公的な場面のことですから、外交関係に
も通ずることだと思います。

 反抗期の若者がオートバイで暴走したり、弱い者いじめをし
たりしているのを、下手に出てご機嫌取りなどをしてはいけな
い。相手としっかり向き合って、「悪いことは悪い」と注意し
なければならない。それが本人の健全な成長のためでもある。
(文責:伊勢雅臣)