老兵の独り言

八尾市をはじめとする全国での左翼情報チェックと真正保守の陣営拡大を願っています。 国連をはじめとする人権条約を基礎とする国内法の点検と法破棄運動も行っています。

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伊勢雅臣先生の「国際派日本人養成講座546号」再掲載より転載しています。
小生も5月24日の吹田での講演会に受講参加します。

『論語』が深めた日本の国柄
~ 岩越豊雄著『子供と声を出して読みたい「論語」百章』
『論語』の説く「まごころからの思いやり」は、
我が国の国柄を深めてきた。

--------------------------------------------------------
★岩越豊雄先生の「論語」講演会と、伊勢雅臣との対談★
 本誌でも紹介した論語素読塾「石塾」の岩越豊雄先生の講演
 なぜ今、「論語」なのか。素読の真髄とは?・・・あなたも
素読を体験できます。
 講演第2部は、岩越先生と本紙編集長・伊勢雅臣との対談で、
教育の本質に迫ります。
と き:5月24日(日)14:00~17:00
ところ:吹田市立勤労者会館 大研修室
参加費:1000円(学生無料)
申し込みは本メールへの返信で、お名前・年齢・職業を添えて
--------------------------------------------------------


■1.孔子の喜びに弾んだ肉声■

「孔子は、その思想が当時の為政者に入れられず、不遇の人生
を歩んだ人だ」と思っていたのだが、実は「その内面では学ぶ
ことの喜びに充ち満ちた幸福な人生を送った人ではなかったか」
と『子供と声を出して読みたい「論語」百章』[1]を読みつつ
今更ながらに気がついた。

 著者の岩越豊雄さんはこう語っている。

 私は小学校の校長を退職した後、子供を対象に、江戸時
代の「寺子屋」をモデルに、素読と習字を組み合わせた塾
を始めました。対象は小学生たちですが、喜んで『論語』
を素読しています。リズムの美しい簡潔な文で、読んで心
地よい名文だからだと思います。[1,p31]

 この本は、岩越さんが子供たちに『論語』の一章ずつを読み
聞かせた内容をまとめたものだが、その文章を通じて、孔子の
喜びに弾んだ肉声が聞こえてくるような気がした。『論語』の
解説書は何冊か読んだことがあるが、こういう経験は初めてで
ある。

 こういう本を通じて、子供の時から学問の喜びを感じる事が
できれば、それはこれからの長い一生を支える「学ぶ力」「生
きる力」となるだろう。

■2.「学びの喜び」■

 孔子の喜びは『論語』冒頭の第一章から弾んでいる。 [1,p37]

 子(し)曰(いわ)く、学びて時にこれを習う。また説
(よろこ)ばしからずや。朋(とも)あり、遠方より来た
る。また楽しからずや。人知らずして慍(いか)らず、ま
た君子ならずや。

 先生がおっしゃった。学んだ時に、よくおさらいをする。
それが自分の身についたものになってくる。なんと喜ばし
いことではないか。心知る友が遠くから訪ねてきてくれる。
なんと楽しいことではないか。人が認めてくれなくとも怒
らない。なんと志の高い優れた人ではなかろうか。

 この一章を、岩越さんは、子供たちにこう解説する。

「学ぶ」は「まねをする」に由来するといいます。「習」
は雛鳥(ひな)が巣の上で親鳥の羽ばたきをまねて、飛び
立つための練習をしている字形だといいます。

 どのようなことでも、練習して初めてできるようになっ
た時の喜びは誰でもよく覚えています。例えば自転車に乗
れるようになった時とか、体が水に浮いて泳げるようになっ
た時の喜びなどは、生涯忘れられない思い出です。学んだ
時にはそれを何度も繰り返し、練習してできるようになる。
それが「学びの喜び」です。小さな事でも、「わかった」、
「できた」、「やり遂げた」という喜びを体験し、積み重
ねると、自信にもなり、物事に意欲的に取り組めるように
もなるのです。

 自転車や水泳を例に「学びの喜び」を説くあたりが、いかに
も小学生にふさわしい。

■3.「学び」と「友」と「不足を思わない」■

 その後に続く「朋(とも)あり、遠方より来たる」と「人知
らずして慍(いか)らず」については:

 学んだことが身につき、自信がつけば自然と互いに心が
通じる友ができ、楽しく語り合うこともできます。そうし
た友が、思いがけなく訪ねてくれた時は、本当に嬉しいも
のです。

 水泳の例で言えば、一緒に水泳を習う友達どうしが、自分は
背泳もできるようになったよ、などと語り合う喜びだろう。

 しかし、たとえ自分が学び、力をつけても、他の人がわ
かってくれない、認めてくれない時もあります。それでも
怒ったり、不足を言ったりしない。そうできる人は、ほん
とうに志の高い優(すぐ)れた人です。

 へたくそな泳ぎで、級友も先生もなかなか褒めてくれないが、
別に不満を言ったりしない。自分自身の上達そのものが喜びだ
からだ。

「学び」と「友」と「不足を思わない」、この3つの事柄
は、学問の喜びということで一貫しているのです。

 岩越さんのこの指摘から、私は初めて、孔子の抱いていた
「学問の喜び」に触れえたような気がした。

■4.「あれが目の不自由な楽師を助ける作法なのだ」■

 さて孔子の志した学問とは、どのようなものだったのか。そ
れを孔子の行動を通じて説いた小学生にも分かりやすい一章が
ある。[1,p204]

 師冕(しべん)見(まみ)ゆ。階(かい)に及ぶ。子
(し)曰(いわ)く、階なりと。席に及ぶ。子曰く、席な
りと。みな坐す。子之(こ)れに告げて曰く、某(それが
し)はそこにあり、某(それがし)はそこにありと。師冕
出(い)ず。子張(しちょう)問いて曰く、師と言うの道
かと。子曰く、然(しか)り。固(もと)より師を相(た
す)くるの道なりと。

 目の不自由な楽師冕(べん)が訪ねてきた。先生は自ら
出迎えて案内し、階段に来ると「階段ですよ」と言われ、
席に来ると「席ですよ」と言われた。一同が座ると、「誰
それはそこに。誰それはここに」と一人ひとり丁寧に教え
られた。師冕が帰った後で子張が「あれが楽師に対する作
法ですか」と訪ねた。先生が答えられた。「そうだ。あれ
が目の不自由な楽師を助ける作法なのだ」



 目の不自由な者の身になって、きめ細かに対応する孔子
の温かな配慮が伝わってきます。相手の身になって行動す
る、まさに仁者の在り方を具体的に学べる章です。

 子張が質問したのは、一盲目の楽師に対して、孔子の取っ
た対応があまりにも丁寧で、礼に過ぎるのではと思ったか
らです。「然(しか)り。固(もと)より師を相(たす)
くるの道なりと」ときっぱりと答える孔子の言葉に、まご
ころからの思いやり、「忠恕」を「一以て之を貫いた」孔
子の確信ある生き方を髣髴(ほうふつ)とさせます。

 目の不自由な人を導いてあげることは小学生でもできること
である。そういう誰にでもできる「まごころからの思いやり」
が、孔子の学問の核心であった。

■5.「人を尊び、まごころから思いやる」■

「忠恕」を「一以て之を貫いた」とは、次の一章に出てくる言
葉である。

 子曰く、参(しん)や、吾(わ)が道、一(いつ)以
(もっ)てこれを貫(つらぬ)く。曾子曰く、唯(い)と。
子出(い)ず。門人、問うて曰く、なんの謂(い)いぞや。
曾子曰く、夫子(ふうし)の道は忠恕(ちゅうじょ)のみ。

 先生が曾子に呼びかけておっしゃった。「参(曾子)よ、
私の生き方は一つのもので貫かれているのだが」と。曾子
はただ「はい」と答えた。先生は部屋を出て行かれた。門
人たちが「何を言いたかったのですか」と尋ねた。曾子が
言った。「先生が貫かれている生き方は、人を尊ぶまごこ
ろからの思いやり、それに尽きる」と。



「忠恕」の字の作りは、「中と心」と「如と心」です。
「中心」とはまごころのこと、「如心」とは、自分の心の
如く人の心をおしはかるという意味です。つまり「人を尊
び、まごころから思いやる」ことです。『論語』でしばし
ば触れられる「仁」にも通じます。それは孔子の一貫した
生き方でした。

 ちなみに「仁」については、こう解説されている。

「仁」とは「人」と「二」を組み合わせた漢字です。つま
り、人と人との人間関係における倫理・道徳の基本である、
「まごころから人を思いやる」ことです。[1,p40]

 孔子の学問は、誰でもが持つ「まごころ」「おもいやり」を
いかに引き出し、発展させるか、という所にあった。

■6.「素直な社員は良く伸び、仕事もできる」■

「まごころ」と「おもいやり」を伸ばすために、孔子は次のよ
うに若者に教え諭している。

 子(し)曰(いわ)く、弟子(ていし)、入りては則
(すなわ)ち孝、出でては則ち悌(てい)、謹みて信あり、
汎(ひろ)く衆を愛して仁に親しみ、行いて余力有らば、
則ち以(も)って文(ぶん)を学ばん。

 先生がおっしゃった。若者よ、家では、親孝行、外では
目上の人に素直に従う。何事にも度を過ごさないように控
えめにし、約束を守る。多くの人を好きになり、善き人に
ついて学ぶ。そうした上で、まだゆとりがあるなら、本を
読んで学んでいけばいい。



「親に孝行することや、人に素直であること」と「勉強す
ること」と、どっちが大切かと問えば、今は親も子も大抵
は「勉強すること」と答えます。でも、孔子は逆だと言っ
ています。

 一流大学を優秀な成績で卒業しながら、違法な株取引で逮捕
されたり、エセ宗教にひっかかって人を殺めたりする人間は、
勉強ばかりしていて、「まごころ」や「おもいやり」を磨かな
かった人間失格者であろう。

 本当に優秀な人は大抵、素直です。経営の神様といわれ
た松下幸之助も「素直な社員は良く伸び、仕事もできる」
と言っています。[1,p46]

 親孝行、素直さ、謙虚さ、謹み、信頼、こうした人格的基礎
を土壌として、その上に知識や技術が花開くのである。

■7.『論語』が深めた我が国の国柄■

『論語』は16百年ほど前に、海外から我が国にもたらされた
最初の書物であった。そしてその「忠恕」や「仁」を核とする
思想は、民を「大御宝(おおみたから)」と呼び、すべての生
きとし生けるものが「一つ屋根の下の大家族」のように仲良く
暮らしていくことを理想とした我が国の国柄[b]には、まこと
に相性の良いものであった。

 そして我が先人たちは『論語』に学びつつ、我が国の国柄を
深めていった。岩越さんは、その歴史を簡潔に振り返っている。

 聖徳太子は、『論語』の「和」を深めて、「十七条憲法」の
第一条に「和を以て貴しと為す」と説いた。鎌倉時代の「曹洞
宗」の開祖・道元禅師は、世を治めるのは『論語』がよいと推
奨していたという。

 江戸時代には『論語』研究が盛んになり、中江藤樹[c]、山
鹿素行、伊藤仁斎、荻生徂徠などが独自の思想を発展させた。
こうした学問の系譜から、吉田松陰、西郷隆盛など幕末の志士
が生まれ、明治維新への道を開いていく。

■8.「素読」の合理性■

 こうした歴史を俯瞰した上で、岩越さんは語る。

 偉人や学者だけではありません。江戸時代は一般の武士
も庶民も『論語』を学びました。各藩の藩校はもちろん、
庶民の子弟の教育が行われた寺子屋では、『論語』等の素
読が行われていました。

「素読」とは、文章を意味はさておき、声を立てて暗唱で
きるまで、繰り返し読むことです。「読書百遍、意自ずか
ら通ず」という言葉があります。声を出して何度も読んで
いくうちに、自然にその意味が表れてくる、分かってくる、
そうした読み方を言います。[1,p28]

「意味もわからない文章を丸暗記させるなど、なんと封建的な」
と考える人も多いだろう。それに対して、岩越さんは小林秀雄
の次の言葉を引用する。

(素読を)暗記強制教育だったと、簡単に考えるのは、悪
い合理主義ですね。『論語』を簡単に暗記していまう。暗
記するだけで意味がわからなければ、無意味なことだと言
うが、それでは『論語』の意味とは何でしょう。それは人
により年齢により、さまざまな意味にとれるものでしょう。
一生かかったってわからない意味さえ含んでいるかも知れ
ない。それなら意味を考えることは、実に曖昧な教育だと
わかるでしょう。丸暗記させる教育だけが、はっきりとし
た教育です。[1,p30]

■9.『論語』の言葉を胸に、人生を歩んでいく■

「朋(とも)あり、遠方より来たる。また楽しからずや」とい
うような言葉も、少年時代、壮年時代、そして熟年時代と、人
生経験を積むにしたがって、自ずからその味わいも深まってい
くだろう。素読とは、そのような言葉の種を幼児期から心に埋
め込んであげることである。

 小学生にたわいのない英会話を教えるよりは、はるかに高級
な人間教育ではないか。そこから、しっかりとした精神的バッ
クボーンを持った日本人が育っていくだろう。

 すでに大人になってしまった人でも、『論語』の中の心に響
く一節を暗記して、それを時々反芻しながら、自らの人生を歩
んでいく、という生き方も良いのではないか。

 ちなみに天皇陛下は「忠恕」という言葉がお好きだそうだ。
ひたすらに国民の安寧を祈られる陛下ならではの言葉である。

『論語』の言葉を胸に抱いて人生を歩んでいくのが、我が先人
たちの生き方であった。
(文責:伊勢雅臣)
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